小野小町と夢と恋

小野小町って誰やねん…とかいう人はいないと思うけど

小野小町おののこまちさん。最近(2025年2月)、FGOにも実装されたそうですね。素晴らしい。
平安時代前期(9世紀頃)の女流歌人で、六歌仙ろっかせん三十六歌仙さんじゅうろっかせん女房三十六歌仙にょうぼうさんじゅうろっかせんの一人として数えられる歌の名手。
世界三大美人の一人にも数えられてます。
ま……美の基準なんて時代と文化によってさまざまですけど。

しかし生没年不詳。本名不詳。父も母も不明(一説では小野篁の孫とか、出羽国の郡司良真の娘だとかいろいろ言われてますが、ハッキリとしたことはわからない)。経歴もよくわかっていませんが、仁明朝(833~850)・文徳朝(850~858)の頃、後宮に仕えていたといわれています。

『古今集仮名序』の紀貫之によれば、小野小町は
「いにしへの衣通姫の流なり、あはれなるやうにて強からず、いはばよき女のなやめるところあるに似たり」
とあり…。現代語訳すると
「小野小町(の歌)は、昔の美女、衣通姫の流れといえる。繊細でワビサビがあるし、なんていうか儚くて美しい女が思い悩んでいるみたいで萌え!」
みたいなかんじでしょうか。(古今和歌集仮名序と衣通姫についてはまた別記事で)
こんなキュンキュンする歌を詠む人は絶対儚い美女に違いないよ!みたいな…大丈夫か紀貫之…

小野小町の歌

そんな小野小町が詠む恋の歌は、淡い恋心とか妹背(幼馴染)への思慕とかではなく悲恋。古今集をはじめとする勅撰和歌集には、彼女が詠んだとされる歌が60首ほど収められていますが、そのほとんどは諦念や激しい恋慕の情を詠んだもの。
そのうちのひとつが古今和歌集の

思ひつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを

これは、
「愛しい人のことを思いながらうたた寝してしまったら夢にまで見てしまいました。夢だと知っていたら目を覚まさなかったのに」
という内容。
ありますよね~。好きな人が夢に出ちゃうこと。あるある!わかる!
けどね、小野小町はそれじゃ終わらないんですよ。
「夢に愛しいあの人が出てきてくれた」
「なのに、私は目が覚めてしまった!」
「あんなに愛し合ったと思ったのも夢だった!」
「あの人のことを愛する気持ちは私の思い込みなのかもしれない」
「でもだからこそ現実には戻りたくなかった。」
夢は、本当に「夢」でしかないのかしら。
愛してくれた人が去ったあと、まだ自分の気持ちはその人のことを思っているのに、現実のあの人は私のところへ来てはくれない。愛し愛された時間は夢だったのか。それなら夢のままでいてほしかった。

…っっっ
小町、わかるよ。アンタのその気持ち。めっちゃわかるよ!!!
きっと私たち、友達になれると思う。枕濡らしちゃうよね~……二度寝しちゃうよね~!!!(違うそうじゃない)

と、まぁ。
代表的なものだけみてもこんな感じで共感できちゃう&深読みできちゃうんですよ。小町。ホントにね…罪な女だよ、小町…。いつの世も恋心って…辛くて…悲しくて…やりきれなくて…それなのに止められない甘くて酸っぱい柘榴みたいだよ…

その他にも

  • いとせめて 恋しき時は むばたまの 夜の衣を かへしてぞきる
  • うつつには さもこそあらめ 夢にさへ 人めをもると 見るがわびしさ
  • かぎりなき 思ひのままに 夜もこむ 夢ぢをさへに 人はとがめじ
  • うたた寝に 恋しき人を 見てしより 夢てふものは たのみそめてき
  • 人にあはむ 月のなきには 思ひおきて 胸はしり火に 心やけをり
  • 夢ぢには 足もやすめず かよへども うつつにひとめ 見しごとはあらず

など…(すべて古今集)
先にも語ったとおり、小町の歌には恋愛を歌ったものが多いんですよね。
特にかなわぬ思いや、悲しみ、諦念を歌ったものが多い。
小町自身が恋多き女性だったからか、そういう歌がたまたま得意だったからかはわかりません。
だって、小町を知る史料はほとんどないんですもの。

小野小町は今でも人気の歌人です。私も大好きです(一番好きな女性歌人は式子内親王ですが、その次くらいに小野小町が好き)。
好きな理由はめっちゃ共感できるから
恋愛脳というなら言え。そうだ私は恋愛脳。
バカにしないでよ~。
ヒトが社会を形成する生き物である以上、「特定の誰か(単数でも複数でも)を好ましいと思うか、そうは思わないか」っていうのは大事な要素なんですよ。
単体では弱い生物だから、社会を形成することで強い力を得ようとする。
つまり、スイミー(レオ・レオニ)!

話がそれたので戻して。
いつの世も、人はだれかを愛しいと思い、寝れば夢を見るものです。
夢に愛しい人が出てくることもあれば、憎い人が出てくることもあるでしょう。この場合の「愛しい」は、「そのものの価値を認め、強くひきつけられるときに生まれる感情」のことです。それは「者」かもしれないし「物」かもしれない。異性かもしれないし、同性かもしれない。愛の定義とか、そういう小難しいことは置いといて。
みんな好きでしょ?恋バナ。雨夜の品定め。

小町が現代でも人気なのは、いつの世もだれかを愛しいと思う気持ちが人の原動力になっているからかもしれません。

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